[コメント] プライベート・ライアン(1998/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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リアリティといってもいろいろあるだろう。群像劇として示されるリアルさは、 確かに本当のリアルではないというひともあろう。だが肉片が飛び散る様は、 映画のストーリーとは異なった次元で、全てをさし示す。それは他ならぬ 私たちの肉片でもあるのだ。
ここには物語が展開される余裕なんて本来ない。物語は、肉片のまえに霧散する。事実、数多くの反戦映画が、結局は物語の不可能性を露呈しているではないか?だが、この映画、そこから物語をつむぎだそうとするのである。物語の不可能性に何度も直面しながらも。
しかも、その物語は拡散している。登場人物それぞれのなかで、造られる物語は 全て違う。いや、ときには合流するように見える。それも一時に過ぎない。彼らの 目の前にあらわれる絶対的な他者としてのドイツ兵は、その物語をそのたびに拡散させてしまう。
生き残った男性だけが、物語全てを背負う他はない。この終結が、成功か不成功かは、観客に委ねられている。
物語は成就したのか?はっきりいおう。僕はしていないと思う。苦しみもがく人間の様だけが、見えてくるように思う。内容は、やはり『シンドラーのリスト』と似てるかも。だが、いずれの作品でも、倫理の問題に苦しむ監督の姿が見えてくる気がするのは僕だけだろうか?確かにどちらの作品でも解決は「時の流れ」である。だがその解決が単にモニュメンタルなものにならざるを得ないことに、僕自身愕然としてしまう。監督とともに悩むことこそが必要とされているのかもしれない。
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