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[コメント] ファントム・オブ・パラダイス(1974/米)

批評の追いつかないフリークス趣味の美味しいおぞましさが満載なGOODカルトクラシック
junojuna

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 まさに見世物小屋の調和的おぞましさで琴線に触れる類まれなカルトムービーである。キッチュである分説得力を持ち得ないはずの風采でありながら終始禁忌的なムードは弛むことなく小気味よいほどのリズムを最後まで崩さず映画は走りきった。ブライアン・デ・パルマのバックブローな完全勝利である。特にウイリアム・フィンリー、ポール・ウイリアムズの異形の相貌はこの映画のカルト度をきわめて純度の高いものにしている。ラストシーンで二人の爛れた顔がクローズアップされる以前にその佇まいだけで十分フリークス感を湛えているという稀有な存在感で、本作に通低する怨み節をことさらに強調する演技を体現しているのだ。そういう意味でのネガティブな根本感情に移入できるため、ウインスロウがスワンの屋敷のガラス窓からスワンとフェニックスの情事を覗き見て嗚咽するシーン(窓を伝う雨がウィンスロウの感情を代弁する)や、ラストでウインスロウがまるでホラー映画の亡者のごとく這いつくばって息絶えるまでを万感の切なさでもって受け入れることができるのだ。さらにはそうした緊迫した切実な空間を構築するのに、性急なカットの応酬や群衆をトラックバックで俯瞰するショット、サウンド・オフでのスローモーションと歓喜と悲哀の対比などデ・パルマの画面処理にも絶妙な効果が生まれている。こうした不純かつ高度なバランスを孕む魅力的な映画は決して狙って撮れるものではないと思う。映画の神に愛された奇跡的傑作である。

(評価:★4)

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