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[コメント] ねらわれた学園(1981/日)

素晴らしいのは松任谷正隆の音楽で今聴いても斬新。ハナ肇千石規子の夫婦はとても濃い。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







近年、反戦を力説される大林監督、昔は『野ゆき』ぐらいしかなかったのになあと思いきや、本作も反戦映画だった。学園が金星人に乗っ取られてSSみたいな生徒会連中が不良学生をリンチ粛清して廻るのだ。

そんな状況に立ち向かう薬師丸ひろ子の造形は彼女のアイドル期通じて最も真面目、日活期の吉永小百合にとても近い。賢くて可愛くてリベラルな女子がひとりクラスにいれば、どんな困難にも立ち向かえるぜ、という組織論が踏襲されている。

本作はこれをバブルでシニカルな80年代にぶつけるも、見事失敗している。時代はこういう正統派アイドルの活躍をパロディの肴にしたくて仕方なかったのだ。そこにこの空疎なホンでは、まるで袋叩きに合いに行くようなものだ。なんか反戦スタンスに照れ隠しが透けて見えて、こちらまで恥ずかしくなり、薬師丸の真面目が気の毒になる。彼女が祈る神様とは何なのだろう。

映画は最悪の記憶があったが、いま観るとそんなに悪くない。スカート覗きから始まる悪趣味も新人部員勧誘のマスゲームのバカバカしさも大林らしいし、前半の合成処理(人物だけモノクロとか、車のクラッシュの件とか)ははっとさせるものが多くて愉しめる。いけないのはクライマックスの美術・特撮の地味さだろう。前半と比べて地味なのがいけない。驚きは最後に取っておくべきだ。

この対決シーンが異様に短く峰岸徹がとっとと退却するのもマヌケで、コックローチの襲撃に出くわした油虫を想起させる。ただ、峰岸のメイクやコスチュームは、最初のモノクロでの登場時は迫力がある。マニアな監督のこと、何か昔の映画の引用なのじゃないだろうか。こういうのはモノクロだから怖いのであって、カラーになるとマヌケになるものだなあと思ったものだった。なお、ホンのレベルでは、何で峰岸が薬師丸に懸想しているのか判らず仕舞いなのは酷い。

手塚真の発声は音声処理されたのだろう、とても効いている。校長役に眉村卓とは大胆な配役だが、意外と真面にこなしておられるのは演出の手腕に違いない。主題歌がアタマとラスト両方で使われるのはプロモ臭漂い詰まらない(アタマでの使用は明らかに演出の邪魔をしている)。当時歌わないアイドルだった薬師丸(ファンはこれに好感を寄せていたものだった)は主題歌歌うのを断ったとのこと。

(評価:★3)

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