[コメント] マイケル・コリンズ(1996/米=英=アイルランド)
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12世紀以来イギリス領となっていたアイルランド独立運動と、独立の立役者コリンズを描いた骨太の歴史大作。この辺の歴史はなかなか知ることが出来ないので、大変参考になったし、お陰で色々調べさせていただいた。私自身にアイルランド史の知識を多少なりとも与えてくれたことだけでも充分ありがたい作品だが、本作の魅力はそれだけにとどまらない。
アイルランド独立を描いた作品はこれまでにもいくつかあった。私が観たのだと『市街戦』(1936)なんかがそう。
いわゆるイギリス人監督と呼ばれる人や俳優の中にはアイルランド出身の人が少なからず存在する。彼らが自分たちのアイデンティティであるアイルランド史を作りたいと考えるのは自然だと思うのだが、商業ベースに乗りにくいというのが現状。実は多くの監督がこれに挑もうとしつつもなかなか現実化しにくいのが現実らしい。実際今もなおアイルランドとイギリスの確執は続いている以上、製作もなかなか複雑なものらしい。しかも映画製作資本はイギリスとアメリカが大きなシェアを持っているから、作りにくいのも道理であろう。
実際、本作の主役コリンズは、アイルランドにとっては英雄でも、イギリスの側から見るとテロリストだし、本人の性格も非常に好戦的な人間で、やっかい極まりない存在だった。視点を変えれば、人間の評価なんて容易に変わるもので、そういう観方も出来る。と考えるのも重要だろう。
本作のジョーダン監督にとっても本作の撮影は悲願であり、わざわざアイルランド人(実際は北アイルランド人だが)のニーソンを主役に据えて力強い作品に仕上げてくれた。
この人はテロリストだけあって謎に包まれている所も多いようだが、その辺は色々想像も働かせ、単なる戦闘的なだけの人物にしなかったのは、演出の巧さとニーソンの巧さだろう。器用な役者なのは確かだけど、特に本作ははまり役といっても良い。
特に、これまでの闘争の歴史ばかりで政治的駆け引きがあまり上手くない人物が、歴史の表舞台に無理矢理立たせられ、それで結果的にアイルランドにとっては屈辱的な国土分断という講和条件を受け入れなければならなかった後半の描写は特に良い。これ以上の戦いは双方が疲弊するだけで、しかも明らかにこちら側に不利である以上、和平は必要不可欠。自分自身が納得いかないのに、それを仲間達に納得させねばならない苦悩…なんか凄く頷きながら観ることが出来たよ。
内戦を描いた割には派手さがあまり無いのはちょっと残念なところだが、英雄の心情を描くという意味においては充分な作品。
それと、やはり風景描写が良い。イギリスも北部になるとほとんど寒帯のため、都市部は薄暗く。その分太陽光を受けた自然は輝く。その対比が素晴らしい。
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