刑事ドラマで刑事が最も輝くのは言うまでもなく殉職シーンである。しかも「サラリーマン社会に嫌気が差して警察に就職したら、警察もサラリーマン社会だった」という『踊る』のコンセプトから考えれば、殉職というのは警察が「サラリーマン社会」らしくないほとんど唯一の要素であり、映画は青島を「ここしかない」というクライマックスに見事に落とし込んでくれた。湾岸署の連中が青島に向かって敬礼しているのを見たときには、「青島よ、おまえの正義と信念はついにみんなに伝わったぞ」と、彼らと一緒に敬礼したくなってしまったほどだ。

　と、結局青島が死ななかったのは御愛嬌としてもあの殉職（未遂）と敬礼のシーンだけでたいへん満足なのだけれど、少しさみしい気分もある。ひと昔前だったら、テレビドラマの中でキッチリ青島を殉職させていたのだろうなぁなどと想像してしまうのだ。『踊る』はいい連ドラだったけれど、これでもう『太陽にほえろ！』や『西部警察』のような歴史に残る名作ドラマにはなり得ない。