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[コメント] 宋家の三姉妹(1997/日=香港)

中国・台湾・香港そして日本。すべての関係がこの1本、否この三姉妹で理解出来る。全篇がドラマの連続であり、歴史とはかくも名脚本家なのかと思い知らされる。ならば日本にも浅井三姉妹という好素材があるのだが・・
sawa:38

これがフィクションなのだとしたら、こんな滑稽で荒唐無稽なストーリーもあるまい。たった三人の姉妹の近親憎悪と家族愛が、あの広大で膨大な人口を抱える歴史ある国家の存亡に影響していたなんて。

だから歴史は面白い。孫文・蒋介石・周恩来・張学良。(何故だか毛沢東の名だけは最後まで出てこなかったが)こういった歴史の教科書やニュースで聞き覚えのある名だたる漢たちの名が彼女たちの下で踊る。まさに「世界」が動いていた。

劇的なエピソード・事件が息つく間もないぐらいに続くその様は、それがそのまま激動の中国史・世界史を表している。それが姉妹という人間的には深いが、国際的には限りなく細く不安定な絆に頼っていたという鳥肌が立つような事実は、ラストで次女の慶鈴が死ぬ間際の言葉「歴史にもしもは無い・・・」の反語になるが、「もしも」は紙一重で起こっていたという事でもある。

この三姉妹の微妙な感情次第では、共産中国ではなく中華民国すなわち現在の台湾の掲げる国旗が北京に掲げられていた「もしも」の可能性もあった。この「もしも」が発展すれば朝鮮戦争も違った結果になったろうし、そもそも朝鮮戦争なぞ起こらなかったかもしれない。その代わりに中ソ激突による第三次世界大戦が起こっていただろう?

この作品は大河ドラマである。140分という時間枠で激動の中国を描きながらも姉妹のそして父との関係をも上手くまとめていたと評価したい。基本に忠実な演出と役者の熱演。幼少期を丁寧に描いた事で、挿入される過去のショットの効果も絶大であった。

微妙にそして後半激しく絡んでくる隣国「日本」に対しては、孫文を匿った日本人・孫文の革命に参加した北一輝ら日本の大陸浪人・日本の陸軍士官学校時代の蒋介石の姿、などを僅かなエピソードでも入れれば、その後の抗日に対する複雑な主人公たちの感情が表せたのにと少々残念ではあった。

それにしても、ドラマティックなまさに映画向きな素材であり堪能できた。さしずめ日本ならば戦国時代の近江浅井三姉妹もこれに匹敵するほどのドラマがある。私に才能が少しでもあるのならば是非とも映画化してみたい素材であるとつくづく感じる。

(評価:★5)

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