[コメント] 戦後在日五〇年史 在日(1998/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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‘歴史篇’にはジャケットの解説文通り「日本憲法の戦後民主主義とは何だったのか」という問題提起、「貴重な資料の撮影」「元GHQ担当官の衝撃の証言」等があり、実に興味深い。もっとも今(2022)の観客なら、「カイザン」「クロヌリ」「破棄」「不開示」・・・に慣れているので、さほど驚かないかもしれない。
更には、7.4統一声明(これには苦笑)、講和条約の元吉田首相の論理(面白い。でも今なら通用しないかも??)、元両首脳全斗煥と中曽根のでしゃばり等々、また在日組織のコロコロ変わる様相、アコーデオン戦争には、失礼だが、呆れるほかなかった。
‘人物篇’は、歴史篇でも語られた‘貧困’‘イジメ’の再度の話だろうと早計に判断しそうになった時・・・現れた新井栄一は凄かった。更には、44分物(You Tubeに有り)が圧巻だ。
ここで音楽について少し触れる。 主題曲は哀愁を帯びた大正ロマン風の曲(タンゴに編曲)で、素晴しい。短い挿入曲も、よく考えられている。挿入歌は、定番の歌か時代を映す歌謡曲にしている。 「出征兵士を送る歌」(軍歌の定番 1939年)、 「かえり船」(‘46) 、「上海帰りのリル」(‘51) 等々。 ‘歴史篇’の最後の90年代は「川の流れのように」(‘89) になっている。 ‘人物篇’は上記の「清河(チョンハー)への道」をたくさん使っている
‘人物篇’は在日1世〜3世が描かれる。1〜2世は成功した人々だが、作者の意図は次の3世の現状、そして未来を暗示すること(未来志向)にあったようだ。
歴史篇の最初で、作者は広島の朝鮮人原爆被爆者慰霊碑の建立者の言葉を紹介している、「もうウダウダと言って来るのですが、イデオロギーとか政治とか、そんなものは関係ないんですよ」。
最初から作者の意図は示されていたのだ。それは、本映画は歴史を語るとともに、一番大事な個人としての人間を描いています、ということだろう。
私には3世の彼らは、「祖国」を忘れてしまうのではなく、心の奥に大事に持って、峠の向こうへ行こうとしている人たちに見えた。
それは様々なルーツを持ち、色々な経験をして来たそして色々な経験をしようとしている我々自身と何ら変わるところはない。
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