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[コメント] あ、春(1998/日)

うーん、微妙な違和感。確かに映画になってるけど。斉藤由貴が意外に良くてびっくり。
ぱーこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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相米監督の長回しは定評がある。今回見て、画面がゆっくりゆれている。そのリズムに慣れるのに少し時間がかかる。慣れるとこれはこれで心地よい。ただ細かいところがどんどん気になってくる。山崎努が出ている時、猫が喉を鳴らす音がする。こういう風に迷惑ものがすり寄ってくる、って意味だろうけど私は興醒め。冒頭のシーンが太った浮浪猫が家に侵入してくるところから始まる。これわかりやすい暗示で、「文学的」と言っていい。全編随所にその手法が使われている。死んだと聞かされた父親が舞い込んでくる、という設定はいい。このトリックスターがぼわーんと病んでるこの家を一挙に塗り替えるんだ、とか思うとそうは進まない。山崎努も自分が捨てた息子に世話になる落ちぶれた父親をやるには、ある意味立派すぎ。斉藤由貴はうまいんだが、精神不安定ないいとこの奥さん、というのとはちょっと違う。発作起こして笑うところは演技のうまさがひきたつけど、違うと感じる。佐藤浩一の好演も、なんだか普通の好青年で終わっちゃう。生育歴考えると、もう少し細かなエピソードが欲しい。ニワトリ育ててるだけじゃ、足りないです。屋上で浮浪者が車いす押すお見舞いのシーン。浮浪者諸君が浮浪者を演技しているのが透いて見える。ドイツ語で歌うインテリホームレスもわざとらしい。ラストシーンを考えると、一気にファンタジーになだれ込んでも良かったと思う。爆発してくれ!フェリーニなんかに、ここやってもらいたかった。あるいは『バートンフィンク』のホテルの壁めらめら炎上、みたいことやってほしい。多分、あの画面のリズムがそういう感じを引き起こすんだと思う。相米さんは亡くなってしまったけど、『うなぎ』みたいな作品撮るようになったんだろうか。斉藤由貴が日本家屋の縁側をぞうきんがけしているシーンが郷愁でした。そうそう、ラストで富司純子が粉骨なめるところはよかった。つのる違和感がなければなあ。テーマや設定が良かっただけに残念でした。

(評価:★3)

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