何だかんだ言って，この作品はやっぱり怖い。それは，怖さやグロテスクさのインフレが起こっていないからだと思う。すなわち，のべつ幕なしに怖いシーンやグロテスクな場面が続くわけではなく，しっかりしたストーリーに沿って徐々に恐怖感を煽っていき，怖がらせるべきところでしっかりと怖がらせるというツボをきちんと押さえているからだ。

だから，首が３６０度回るシーンなどがすごく怖いなどというだけでなく，（他の方のコメントにもあるように）登場人物それぞれの苦悩や悲しみもにじみ出ている。ストーリーにしたがって，リーガンの母親やカラス神父の内面がきちんと描かれているからだ。ホラー映画というジャンルを云々する以前に，実によくできたドラマだと思う。

そして，冒頭のシリアでの発掘の風景も，後々の展開を暗示するかのような禍々しく印象深いカットが連なっている。この辺も実に巧いと思う。

ただ，今観ると思ったほど怖くないのは確か。これは，もっと刺激的でグロテスクな映像が氾濫しているからだろう。こういう刺激的映像のインフレ状態は，本当に中身のある映画をどんどん駆逐していく。よくない傾向だと思う。