[コメント] 欲望という名の電車(1951/米)
確かにこれは面白い。映画として面白い。エリア・カザンって、赤狩り時代の振る舞いは私にはどうでも良いが、単純に大げさな演出が大嫌いだ。画面スタイルが一貫していないのもダメ(このあたりは日本でいうと木下恵介が共通する感じ)。
しかし、そうは云っても力のある演出家であることは確かなのだろう。ときおり本作のようなグレートムービーを作ってしまう(というのも木下恵介が共通する感じ)。『波止場』も見返してみたくなった。
まず画面の特徴として、流石にハリー・ストラドリング、全体に影の使い方が上手い。例えば冒頭のボーリング場のシーン。天井の扇風機のせいで照明が明滅する。これが観客に不安感をじわりと植えつける。或いは、桟橋のシーンの濃霧の表現なども唸らされる。また舞台となるアパートの見せ方も秀逸。ポーカーのシーン等で上の階を意識させる部分や表の階段を使った演出が映画の空間を造型する。役者に目をやると中盤まではキム・ハンターがヴィヴィアン・リーを食うぐらいの存在感を見せるが、しかし後半はリーの独壇場。特にエピローグのようなラストが凄絶で声を上げて喜んだ。床に倒れたリーが天地逆転している(頭が下になっている)カットの感覚なんかは実に映画的で、珍しく「カザンも侮れない」と思ってしまった。
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