コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 不安(1954/独=伊)

歌劇場のボックス席に元愛人が闖入してバーグマンの指輪を奪っていく辺り、カフカのような不条理の手触り、意味不明の可笑しさがある。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







だから後半に「不安」(原題は「私は愛を信じない(不安)」)の理由・陰謀が明かされた後も、それは本当なのかという疑念が残る。バーグマンがこの理由に説得されるほどに、観客は説得されない。積み重ねられた良心の呵責である「不安」は、人為的なもっともらしい理由で解消されるものではない。これでは辻褄が合い過ぎる。「不安」は現実とズレた処で肥大化するものだ。このズレが本作のキモだと思う。

同様に、ホウカムとしか云いようのないラストは、バーグマンの願望による幻覚に違いないのだ。子息の待つ郊外の一軒家に至る、車のライトに照らし出された曲がりくねる山道の行く先は「不安」でしかないと、映画が語っている。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。