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[コメント] 人情紙風船(1937/日)

「髪結い新三」とかいうタイトルにしたらダメだったろう。誰もが言うが、戦争がなければ日本映画の歴史も変わっていたかも。日本のベルイマン。
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







紙風船が長屋の侍の住まいに一連の流れで幾度となく姿を現すが、見ている者は映画が終わるまでそのことに気づかない。そして最後の最後にそのことをあらためて認識することになる。このシーンを表現するために、この監督はこの映画を撮ったのだ、ということがわかってくるのだ。

この優しさ、そして江戸情緒に満ち溢れた会話と仕草。江戸を堪能するだけでも十分な映画だ。

構図としては浪人→大名、チンピラ→親分、親分→質屋+大名という三重構造の中で浪人侍とチンピラが果ててゆく姿を緻密に綿密に表現している。

東宝映画の前身PCLで製作された映画であるが、古い東宝映画にあるようなセリフ(録音)が聞こえない、というようなこともなく、ドラマが見事に体現できる。

そしてまた、奥行きと枠を意識した映像に目を見張る。ずっと奥の部屋でことが起こる。その映像を枠。スクリーンとは別の枠がある。松竹映画に代表されるようなローアングルからのカットも見事だ。

(評価:★5)

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