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[コメント] ハンナとその姉妹(1986/米)

宗教よりマルクス兄弟。生きる喜びは映画にある。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







2023年に再鑑賞。全作品観直したいんですよね、上映してくれないけど。

いろいろ知ってしまった今観ると、「あ〜、ウディ・アレンの浮気癖が投影されてるんだなぁ…」って思っちゃう面はあるんですけどね。ウディ・アレンほど、私生活(の好不調)が如実に作品に出る作家はいないから。だからいろいろ知りたくはなかったというのが本音。

本間長世という学者の「ユダヤ系アメリカ人」という本に引用されていて気付いたシーンがあります。劇中、ユダヤ人のウディ・アレンが人生に悩んでカトリックに改宗しようとしますね。キリスト関連グッズ(?)を買い込んだ彼が、その上に一緒に購入してきた食パンをポンと置く。その食パンの名前は「ワンダーブレッド」。よく売られている一般的なパンだそうです。日本ならヤマザキパンといったところでしょうか。キリストの上に日用品を置くということと、そのパンの名前が「ワンダー(奇跡)」というギャグなんですけどね。

ウディ・アレン作品をもう一度観直したいと私が切望する理由は、こうした、当時は気付かなかったけど、大人になって分かることが無数にある(であろう)点なんです。多作だから大変だけど。

例えばこの映画、「感謝祭」のホームパーティーから始まるんですが、私は今回再鑑賞して、ベルイマン『ファニーとアレクサンデル』にインスパイアされたんじゃないか?と勝手に想像したんです。あっちはクリスマスパーティーですけどね、同じく俳優一家の話だし。

ワンダーブレッドも感謝祭も、それの持つ意味は日本人には皮膚感覚では理解できません。映画は時代も国境も超えないというのが(押井守の受け売りの)私の持論です。でも、時代も国境も超える普遍的な「哲学」をこの映画は提示します。

人は悩む。

この映画には2人の男が登場します。ハンナの「元夫」と「今夫」です。まるで「大豆田とわ子」。2人は「病気」に悩まされます。一人は「病気恐怖症」、もう一人は「恋の病」です。そんな彼らに巻き込まれたり、あるいは全然関係ないところで、ハンナとその姉妹たちも「悩み」ます。それが人生なんですよ。泣いたり、笑ったり、悩んだり、恋したり・・・それがウディ・アレン作品に一貫して流れるテーマのような気がします。

そして、そんな人生の苦悩から救ってくれるのは、宗教ではなく、『我輩はカモである』。これはもう、ウディ・アレンの「俺、映画大好きなんだよね」宣言なのです。今となっては「俺、映画と女が大好きだ」宣言のような気もしますが。

(2023.08.14 CS録画にて再鑑賞)

(評価:★5)

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