[コメント] オリエント急行殺人事件(1974/英)
映画としては特異な構成。最初の30分で登場人物の顔見せと状況設定の呈示、事件の描写は僅かで、残り90分ほどは尋問と種明かしで殆どポワロが喋っている。
映画の「動」の部分を一手に引き受けたアルバート・フィニーは、クセのあるキャラを怪演・熱演で大したものだと思う。で、フィニーの名人芸に対して受けの演技を繰り出す重厚キャストの乗客たちが、各々短い時間ながら個性的な印象を植え付ける。
もう一つの主役が事件の舞台としてのオリエント急行そのもので、イスタンブール駅の猥雑さ、クラシカルで壮麗な内装、疾走する機関車から猛烈に吐き出される煙の豊かさ、積雪に先を塞がれることによる静寂な異世界感など、旅情を掻き立てられる。
原作を知らずに初見一発で全てを理解するのは至難の業だし、そもそもカタルシスのある鮮やかな推理劇というわけでもなく、会話劇と情感を余裕ある心で楽しむべき作品だろう。
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