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[コメント] カサブランカ(1942/米)

イングリッド・バーグマン、“君の瞳に乾杯”、「時の過ぎ行くままに」と、語るべき要素が多いメロドラマの名作だが、第2次大戦中の1942年製作という時代性を反映させている点でも、やはり名作なのだと思う。(2006.07.15.)
Keita

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 イングリッド・バーグマンの美しさが眩しい。彼女が画面に映ったとき、そこだけが違う空間にすら感じられた。気品の漂う銀幕女優だ。哀しみにより涙ぐむその目の美しさを何度も見せられると、“君の瞳に乾杯”という台詞を何度聞いても飽きないくらいだ。メロドラマは女優の素晴らしさによって引き締められる。

 バーグマンの輝きに加え、粋な台詞の数々に、名曲「時の過ぎ行くままに」と、映画におけるキーワードとなる娯楽要素が豊富で、全編通して楽しむことが出来る名作だ。メロドラマと見ても、サスペンスと見ても、コメディと見ても、バランスよく構成されている。

 だが実は、注目すべき点はその時代性にあると思う。1942年に製作された映画で、それは第2次大戦真っ只中である。その時代の重苦しい雰囲気を、この映画から感じ取ることが出来る。

しきりに流れるフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」。連合国側のプロパガンダ映画だと取ることもできるだろう。それもナチへの警戒を表す時代性ゆえである。ストーリーに絡む部分では、ラストシーンが時代性の象徴に思えた。ハンフリー・ボガードはバーグマンと一緒になることを選ばず、代わりに選んだのは愛国心であった。

この選択は、対ドイツで考えた場合、一番良い手段であった。反ナチの地下組織の指導者をアメリカへ逃がし、自らはドイツの司令官を殺害するために、愛する人と別れる道を選んだ。おそらく、第2次大戦中だからこその選択だと思う。

これが戦後であれば、国のことよりも愛する人と共に、という駆け落ちも考えられる。だが、ここではそれは絶対にできない状況だし、そうなっていたら物語として冷めてしまったであろう。

そういった時代性も絡んで、ラストシーンは非常に感慨深いものになっていると思う。複雑な事情が絡み合った上での別れ。バーグマンの涙…。空に立ち込める霧が、大戦中という暗い時代の雰囲気を、物語っている。

(評価:★5)

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