[コメント] 北北西に進路を取れ(1959/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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個人的にサスペンス映画は脚本が緻密に組まれていて、尚且つ訴えかける深みがあるものが好きだ。この映画には自分が好む類とは違うのだが、極上のエンタテインメント・サスペンス。現在、サスペンス映画は腐るほど存在するが、この映画には娯楽サスペンスとしてのおいしい部分がほとんど詰まってる気がする。136分間、飽きさせずに次々と話を展開させる。謎解きの面白みがあるわけでもなく、ストーリーも今となっては新鮮なはずもないのだが、それでもとにかく楽しませるヒッチコックの手腕は見事。脚本も決して派手にしすぎず、それでいて地味にしすぎずにうまくまとまってる。こういう映画が59年の時点で作られてしまっているのだから、この手の映画だとそう簡単には傑作は生まれないわけです。
映画自体、飽きずに見られ素直に面白いのだが、ワンシーンワンシーンの作り方が巧みなので非常に惹きつけられる。例えば、8分もの間、何も起こらない農薬散布のシーン。なんてことはないシーンなのに印象に根付く。ゴダールが『映画史』の中で、「ヒッチコックの映画の詳しい内容は忘れたとしても、その映画のシーンだけは鮮明に覚えているはず」というような発言をしていたのだが、その通りだ。クライマックスのラシュモア山のシーンにしてもそうだ。また、イニシャル入りのマッチなど小道具の使い方も巧い。本当に娯楽サスペンスの見本のような映画だ。
ちなみに、エバ・マリー・セイントの魅力も素晴らしい。列車の中のラブシーンも絶妙。セクシーさと同時に怪しさも兼ね備えた風貌がGOODです。あと、オープニングタイトルも好きだ。『古畑任三郎』のタイトルロールは確実にこれに影響受けてるな、と密かに思いました。
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