[コメント] イベント・ホライゾン(1997/米=英)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
テーマがデカい映画だと思った。
まず設定。ブラック・ホールを人間の手で作ってしまったというのだ。それは「磁場を回転して重力量子を集中させる。テンソルの法則どおり時空のひずみを拡大し、そして特異点を形成する・・・」ということ。
分かり易く言えば「一枚の紙を時空とする。紙の上にA点とB点がある。出発点と目的地である。その間の一番近い距離は直線である、と思われるが本当はゼロである。そのためにはゲートがいる。空間を折り曲げるとA点とB点は同じ時に同じ空間に存在することになる。つまり紙をペタンと折り曲げ、A点とB点を重ねるとその距離はゼロになる」ということ。
光より早く進むことは不可能とされている相対性理論だけでなく、自然の法則そのものを覆した技術を開発したわけ(それが可能かどうかはまったく別の話)。
科学者はまだ発見されていない技術を開発したいものなのだろう。けれど度を越すとそこに待ち構えているのは悲惨な結果しかない。
次に注目したいのは、そのブラック・ホールによってイベント・ホライゾン号が行き着いた先。
なんたって別の次元。そこは混沌と真の邪悪の世界(つまり考えられるのは地獄?)。うわべの真実の世界で生きている人間にとってはとても生きて行ける次元ではない。 取り返しのつかない過去の過ちなんて誰でも持っているもの。それが表面に出てくる世界。前向きに生きて行けるはずもない。
最後に、博士が未知の次元に取り付かれて自ら行こうとした点。
明らかになっている事実より先を見たい、新しいものを発見したいという科学者の心理が露になっている。科学者とはそういうものなのかもしれない。
でも、行き過ぎた開発は人間を駄目にする可能性もある。 本来、技術の発展は人間がよりよく生きるために、快適に過ごせるために発展していくものなんだよ。
そんな人間のエゴを追求した映画だった。
だから私はこの映画が好き。『ガタカ』と同様、これから先、起こりえる進歩から生まれる悲劇を考えてみるべきなんじゃないかと思う。
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