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[コメント] 暴力脱獄(1967/米)

主人公ルークは‘神’か‘社会のクズ’か、それとも「男一匹ガキ大将」の‘鬼頭政次’か。
KEI

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







彼の軽犯罪とか刑務所内での行動だけをみれば、単なる‘社会のクズ’なのだが、気になるシーンがいくつかある。ぶっ倒れた時に戸板に乗せられた彼の姿は十字架のキリスト姿そのものだった。

 そして、彼は何度か天に向かって叫ぶ「神よ、神よ、答えてくれ」。これは彼が‘神’―というより、人皆の罪を背負って死んでいったキリスト=殉教者という方がいいかも―という意味ではないか。

 そうすると、このム所は人間社会を模したものであり、ム所の規則は現代人が縛られている社会のルールであるといえる。サングラスの看守は、その名もゴッドフリー(GODFREYだが)神から自由になった者(!?)であり、悪魔だとみる(!!?)こともできるのではないか。

もう1つ頭に浮かんだのは、本宮ひろ志の漫画「男一匹ガキ大将」の1つの挿話「刑務所編」に登場する‘鬼頭政次’という男だ。この話は鬼頭の正体が一体何者なのか?というミステリー仕掛けになっているので詳細は言えないが、鬼頭は‘悪党ながらスジはスジで通す男’として描かれている。

当然ながら、まんがの方は人物造形という点では映画にはるかに及ばないが、そのような者としてルークを捉えることが出来るのではないか。

3通りの例を示したが後は観客の考え方次第だと思う。私としては、‘神’はあまり好きではないので、(神+鬼頭政次)÷2 というところです。

最後に付け加えたいのは、「男一匹ガキ大将」では鬼頭政次が主人公に、自分の生き方を見い出す何かを残すという事。そして、本作もルークが皆の心に明るい何かを残したという事。そんなさわやかなラストが気に入っている。

<補足>ふと気になって調べてみると、「男一匹ガキ大将」(雑誌少年ジャンプ掲載)は'68〜'73になっている。ということは発表は映画の方が先、ということになり・・・。しかしそんな指摘は意味が無いであろう。両作品ともその立ち位置が違う傑作なのだから。

(評価:★5)

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