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[コメント] シャイニング(1980/英)

この刺激、この恐怖、まさに中毒性。
terracotta

いやぁ、映画を見終わってはた、と気が付くと口をあんぐりあけていた。あまりにも恐ろしいものを目の当たりにすると、目をそらすことすら出来ずに凝視してしまう、あの感じに似ている。洗濯物干しのロープがピーンと張って、シーツの重みに耐えていたのがバサッと床に落ちた感じともいえる。あー、しんどかった・・・。

観終わって、いま思い返すとき、ふと『羊たちの沈黙』が頭に浮かんだ。ラストの方で追いかけっこがあるあたり、似ているといえば似ている。この映画を思うとき、私の生涯で十指に入る傑作と思っている羊たちの沈黙も、少しインパクトがあせて見える。しかし、この2つの映画には、大きな大きな違いがある。羊たちの沈黙では、正常対狂気という構図が(まぁこの際レクター博士も正常の方に分類してもいいかもしれない)成り立つように見えるが、この作品は100パーセント狂気といってもいい。この点で大きく違うので、やっぱり羊たちの沈黙は羊たちの沈黙として偉大であり、シャイニングはシャイニングであるのである。

狂気というものに私たちは厳冬に冷水に放り込まれるかのような恐怖を覚える。理性の及ばないことほど恐ろしいことはない。そこには善と悪の区別はなく、やっていいこと悪いことの区別は存在しない。言い方は悪いが「何でもあり」という状態である。通常こういう人または状況を社会は許さない。しかし社会と隔絶したところではまさに「何でもあり」がまかり通る。スティーブン・キングの書く物語は、その「何でもあり」を描いたものが多いように思われる。それを見事に映像化したという意味でもこの映画は素晴らしくおぞましいといえるのではないですか。

ただ、『セブン』や何かと違うのは、最後にホッと出来たこと。まるで夜が明けて目がさめたら悪い夢だったと気が付くように。

現金に体を張れ!』が私のキューブリック初体験だった。この『シャイニング』で、すっかりキューブリックアディクション。次は『ロリータ』みてみようっと。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)きわ[*] chokobo[*]

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