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[コメント] 道(1954/伊)

ジュリエッタ・マシーナの不可思議な魅力が良い。前半は退屈したが、内容の全てが終盤の虚しさを生かしている。
Keita

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 正直言うと、前半から中盤は退屈です。場面によってはものすごく。そして中盤はアンソニー・クイン演じるザンパノに相当イライラする。だが、見終わって思ったが、前半の退屈さ、中盤のイライラ、これら全てがこの映画には欠かせなく、これら全てがあってこそこの映画は良かったのだ。

 退屈だった前半だが、そこでも見るべきところはあった。全編通して言えることではあるが、冒頭からジュリエッタ・マシーナ演じるジェルソミーナの無邪気さやその表情には何故か惹かれる。ビデオのジャケットの写真を見たときは変な顔の女だなぁ、と感じていた。台詞でも「ブス」と言われていた(別にブスとまでは思わないけど・・・)が、抜群に美しい女性とはほど遠い存在。だが、仕草から表情から何から惹きつけられる魅力がある。鼻を赤くして太鼓を叩いたり、小鳥の真似をしたり本当に無邪気。かなり印象に残ってしまう女性である。

 中盤、ザンパノにイライラしたと書いたが、それと同時にそれでもザンパノに付いていくジェルソミーナの心境があまり理解できずにいた。だが、終盤を見ていると納得できた。あれだけイライラする最悪男のザンパノだが、ジェルソミーナと別れてからの彼を見ているとどこか惨めさを感じる。別れる際に、ジェルソミーナに毛布を掛けてあげたところで彼の密かな優しさを感じたし、一人で芸を披露する際には活気をあまり感じられず・・・。そしてラストに浜辺で一人泣き崩れる姿は異様に悲しい。最悪な男と思わせておいて、実はすごく純な心を持った男なんだと思った。以前『ベティー・ブルー』を見たときも思ったのだが、なんだかんだ言っても一緒にいた人がいなくなるということは辛いことなのだろう。

 この映画はついついジェルソミーナに気が行ってしまうが、最後を見るとザンパノの視点で見た方が感じるものが大きい気がした。ちなみに、ザンパノもジャルソミーナも何度も呼ばれるせいもあって不思議と耳に残る響きですね。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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