[コメント] エリザベス(1998/英=インド)
陰謀蠢く歴史の一端を、短い時間にドラマティックに上手に描いている。下手をすると歴史の流れを追うことで流れそうになるのをエリザベスの人生の過程にスポットを当てることで文学性が醸し出ている。ヒロイン演じたブランシェットが、知性と気品だけでなく、女王たる筋の通った強さと圧倒的オーラで魅せる。映像もまた美しい。
冒頭のオカルトめいたオープニングから一気に引きずりこまれる。それぞれに野望を秘めた貴族たちの中で、透けるように白い肌のケイト・ブランシェットは、無垢を描きたいはずの少女時代から、隠しようのない聡明さに溢れている。史実に基ずく歴史大作はキャスティングが命なのだが、このリアルなオーラを光線のように放つブランシェットの抜擢は作品に息吹を感じさせ大成功と言える。ジェフリー・ラッシュらと見事に渡り合い、強さと、誇りと、悲しみを演じるヒロイン像は,ブランシェットにエリザベスの亡霊が憑依したかのよう。多くの策略や死が錯綜する物語の中、一筋の光の如く、真っすぐに他を寄せつけずに突き進むエリザベスの姿は象徴的で印象的。ラストに、それまでの駆け引きや恋愛沙汰、策略など、すべてを打ち消すかのように意を決し、白い化粧を施した姿は単なる女王の存在から、神々しさまでを感じさせ息を呑む。感傷やメロドラマ調を消した潔く高潔なそのすべてを集約したラストに、ただただ心を奪われる。
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