[コメント] 秘密(1999/日)
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残念ながら読めました、あの嘘は。平介に娘の名で呼ばれて、その夜涙を流す直子の姿を見つつ、「彼女はこの後どんな決意をするのだろう」なんて調子で見ていたので。でも読めた読めないなんてことは、この際よろし。
どうも心に引っかかるものを感じてしまう展開なのだが、この際2人の間で片付ける問題は置いおいたとして。それにしてもラストの残酷な展開は何なのだろうか。個人的には平介が可哀想だろ、ってなことよりも結婚相手が可哀想だろ、とまずは言いたい。いかにも好青年で、様々な事情で家庭の幸せを人一倍望んでいそうなキャラを立てときながら、それはないだろ、オイ。そもそも直子が本当に好きで彼と結婚するのかも分からんし、土壇場で嘘をつき通せない姿を見せられた日には、その後の展開に不安を感じずにはいられんよ。bunqさんと同様、「つき通せぬ嘘はヤメレ」と言いたい。
はっきりしたカタチで知ることはなくても、きっと彼は妻が何かしらの「秘密」を抱えていることを薄々感じながら日々を送ることになるんだろうな。きっとそれが彼と妻の間で一枚の皮膜となって、終始その存在を意識しながら生活するのだろうか、なんて思ったり。しかもさらに残酷なのは、(そのときは知らなかったとはいえ)その「秘密」に加担することとなる平介が、彼のオヤジさんの最後のコトバを通して、家族の幸せについて懇々と説いてみせるという展開。運命の皮肉なイタズラってヤツなんだろうか。
そもそも「家庭の幸せが自分の幸せ」というコトバを、この物語の肝として鑑賞したトコロが間違いだったのだろうか。印象的なシーンでさも印象づけるようにして語られるコトバにも関わらず、あの結末のせいで話の本筋からイマイチ宙に浮いているという違和感は否めない。結局は「運命の残酷なイタズラ」というトコロから一歩も出てない話のような気が。
ともあれハイタカさんのおっしゃられている「俗なイヤらしさ」を満喫できる映画でもあるし、展開の弄りかたもなんともイヤらしい。そのなかでヒロスエ嬢の(良くも悪くも)ある種のイヤらしさがしっくりと嵌ったような気がしないでもない。それは評価させて頂きマス。
追記: 印象に残った(というか好きな)トコロ。直子の部屋を引っ掻き回しながら、平介がその嫉妬に狂った己の姿をフと鏡の中に見てしまうシーン。でもそこで疚しさとの間を行ったり来たりするのかと言えば、そうでもないみたいでしたけど。
(2002/9/1)
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