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[コメント] 自転車泥棒(1948/伊)

遣り切れない.
ルミちゃん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







遣り切れない.この言葉は二つの意味を持ちます.

1.やり遂げることが出来ない.

2.我慢できない.

自転車を盗まれた男、窃盗の一味を追い詰めても、最初の老人は自分と同じ貧民.次に見つけ出した若者も持病もちの貧民.そして、自転車は見つからない.これは、やり遂げることが出来なかったのです.

そして、結局この男、自分でも自転車を盗んでしまった.我慢できなかったと言わなければなりません.

手を繋いで泣きながら歩く親子、ここに人として失ってはならない心、親子の信頼が描かれているのは言うまでもないことです.人の物を盗んではならない、これも言うまでもないことなのですが.

けれども、世の中、遣り切れない事が沢山あると言わなければなりません.

大きな例を上れば、日本では原爆で多くの犠牲者を出しました.原爆の被害に遭われた方達は、我慢できない思いを我慢されたはず.そして、戦争に反対する人々、原爆に反対する人々は、核廃絶、核根絶を訴え続ける.けれどもそれが実現するのはいつのことか.つまり、やり遂げることの出来ない事を、やり遂げる努力をする以外に方法はないのです.

ベトナム戦争では、ゲリラに手を焼いたアメリカは、ナパーム弾と枯れ葉剤をまき続けました.ベトナム全土をはげ山にしてやる、当時の大統領の言葉のです.その結果がどうであったか、ベトナム人に遣り切れない想いを残したのは、間違いありません.

ベトちゃんとドクちゃんでしたっけ.どちらがどちらか忘れたけれど、二人共に救うことは出来なかった.やり遂げることが出来なかった、苦しみ、悔しさが残ります.

この映画の親子、必死に自転車を探した、やり遂げる事の出来ない努力をしたが、自転車を取り戻すことが出来ませんでした.けれども、だからと言って、他人の自転車を盗んではいけないのは当然のことであり、日本も、他の国に原爆を落としてはいけないし、ベトナムもアメリカに枯れ葉剤をまいてはいけないのも、これも当然のことです.

遣り切れない、この思いに対して、やり遂げることの出来ないことを、努力してやり遂げようとすること.今一つは、我慢できないことを、我慢しろ、これがこの映画の結論と言わなければなりません.

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ゲロッパ[*] G31[*] のこのこ

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