コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] さらば映画の友よ インディアンサマー(1979/日)

ダサいサブタイトルそのままのダサい60年代賛歌。原田眞人の産業監督化はすでに始まっている。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







テレビで三億円強奪から二週間と報じているから68年の設定。映画上映がゲバ棒学生の乱入で中止になりディスカッションが始まる。映画上映を続けろとこれに抵抗する客の川谷拓三。映画は娯楽であり政治化に反対するというスタンスを本作は支持するのだろう。しかしその割に「68年は暴力の年だ」と途中で川谷が暴力的になり、いつの間にかヤクザ噺になるのは散漫な展開。

浅野温子の紋々見て萎える没個性な主人公重田尚彦石橋蓮司を殺したいと口走るのを映画の友川谷は本気にして拳銃準備。台湾の買春ツアー帰りの没個性な主人公は冷笑して、川谷を大部屋俳優だろうと何時の間に調べたのか素性をバラシて恥をかかせて立ち去る。この展開は何なんだろう。川谷の殴り込みに69年の学園闘争のテレビ報道が重ねられるのもいい加減なものだ。政治も暴力もただのポーズと晒していて恥ずかしい。最後は幻覚らしき映画館でふたりが笑い合うのもいい加減な収束。こんなんで映画の友もないものだ。

川谷の『雨に唄えば』のパロディなどは演出が照れているように見えてこちらが恥ずかしくなる。夕陽見てグッドナイトベイビー、浅野の処に駆けつけてあの時君は若かった、と映画と関係ない郷愁一般に向かうのも退屈。結局、本作で回想される60年代は皇太子ご成婚から万博までの高度成長日本であり、やくざ映画は刺身のつまでしかない。室田日出男はホモセクシャルの役で、終盤にやおら自殺した友人の回想始めるのも半端。

だいたい、映画ファンが新宿から沼津へ引っ込むだろうか。これはしかし、沼津でも映画がたっぷり観られた背景があるのかも知れない。この沼津の映画館のプログラムに「ニュース」というのがあった。考証はしっかりしているのだろうから、当時はまだニュース映画がかかっていたのだろう。沼津でのロッジ風喫茶店も映画とは関係のない、ただの高度成長日本であった。

結局、いちばんいいのは冒頭の映画館の件。田舎町でカミソリ振り回す浅野温子は、『聖母観音大菩薩』に『高校大パニック』に本作といいキャリア重ねたのに、以降は角川映画連発でトレンディドラマに至るという残念。本作で限界を感じたのだろう。

(評価:★2)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。