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[コメント] 青葉繁れる(1974/日)

敏八じゃなくて喜八の『八月の濡れた砂』。今ならコンプラ的に全アウト。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







2024年、岡本喜八生誕100年で初鑑賞。機会があったので新百合ヶ丘まで出向いて大画面で鑑賞。

井上ひさしの1950年代の実体験を基にした原作を岡本喜八が1970年代に舞台を置き換えた作品だそうで、秋吉久美子演じるヒロイン若山ひろ子のモデルは、井上ひさしの同学年で当時戦争で仙台に疎開していた若尾文子らしいですよ。

この作品、ひさしと喜八の「アンチきれい事」だと思うんです。青春なんて綺麗なもんじゃねーんだよ、という反骨精神です。なんだよロミジュリ。若い男女の恋愛がそんな美談で終わるわけねーだろって話です。

ついでに言うと、英語の先生が「おーロミオ!」というシーンがあるんですが、その先に神棚が映ってるんですね。これはおそらく意図的な演出で、ほんの30年前まで「鬼畜米英」言うとったのに今じゃシェイクスピアをありがたがっているという、岡本喜八「戦中派の恨み節」だと思うんです。

ちょうどこの作品当時、秋吉久美子は『赤ちょうちん』『』『バージンブルース』でブレイクした頃ですから(草刈正雄も丹波哲郎の息子も俳優デビューして間もない時期<余談です)、もしかするとこの作品は、岡本喜八の藤田敏八パロディーなのではないかと。喜八流『八月の濡れた砂』。政治の季節が終わって、いわゆる「しらけ世代」に至る若者達の物語。今ならコンプラ的に全アウト。不適切にもほどがある。

余談

撮影が木村大作なんだけど、岡本喜八の話によれば、この作品から「手持ちカメラ」にしたんだとか。

(2024.05.12 川崎市アートセンターにて鑑賞)

(評価:★4)

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