ピュリッツアー賞をとった沢田教一みたいな目的意識が強い人ではなく どっちかっていうと、有名になりたい一心で写真をとっていたみたいです。

でもこの〈衝動〉というのは、作家のモチベーションだと思うんですよね。 わけわかんないけど、やっちゃう。それが作家の本能だと思います。 そういった意味で、一ノ瀬泰造は、生死をかけてカンボジアの写真を 撮るわけだから、私にとっては、とても惹かれる人間でもあります。

この映画は、奥山和由氏が、松竹を解任されて、 チームオクヤマを設立して初めて作った映画です。奥山さんにも、 わけわかんないけど、作りたい衝動があったのだろうな…と私はこの 映画を見て好意的に思いました。なんとなくですけど、画面に勢いが あった。映画を作るんだ、という男の執念を感じました。 それに浅野忠信が、演技で十分応えていると思います。

ラストをお涙頂戴にしなかったのも、良かったと思います。 泰造の本も、突き抜けた明るさを持っているので、この映画は これで良かったとのではないかと、随分前に見て、おぼろげな記憶に なっていますが、レビューを書いてみるのでした。