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[コメント] 鏡(1975/露)

吃音者の催眠術治療シーンから始まる。こゝの意味、存在理由も俄にはよく分かりませんが面白い。続いて、農場の柵に座って煙草を喫う女性のショット。ドリーで寄る。主演のマルガリータ・テレホワ
ゑぎ

 実を云うと、1980年の日本初公開時に見ているのだが、多分半分ぐらいは眠ってしまったように思う。これが、私の劇場映画館での最長睡眠記録だと認識しておったのです。なので、今回、再見するにあたり、ブラックコーヒーと、ブラックガムを持参してのぞみました。しかし、杞憂でした。今回はメッチャ楽しめました。当時とは映画の見方が全然異なるので、そうだろうと推量していたし、さもありなん、という感じです。簡単に云うと、映画の形式を楽しむ姿勢で見ると、プロットの難解さはどうでもよくなる、というのが私の感覚です。

 繰り返し挿入される、草や木が風になびくイメージ。机の瓶が倒れる、いかにもスピリチュアルな画面。超常現象で云えば、テレホワが、ベッドから宙に浮いているカットも挿入される。納屋が燃える場面の炎や、髪を洗うスローモンションカットの水のイメージ含めて、美しい、心地よい画面の連続だ。あるいは、雨の中、印刷工場へ走り込み、印刷直前に校正ミスを確認するシーンの何だかよく分からないスリルの醸成も見事。スリル、ということだと、疎開先で、医者を訪問し、エメラルドのイヤリングを売ろうとする場面も何か怖いのだ。鶏をつぶすよう半ば強要される。その前に、この家の2歳の赤ちゃんのカットがあるが、その可愛らしさとの対比も良く効いた演出なのだ。その他、登場人物は、幼児期の子供二人や、息子や、お祖母さんなどと出て来るが、ナレーター(主人公)の妻と母親を、同じマルガリータ・テレホワが演じていることもあって、人物と時間軸の関係がよく分からなくなってしまう。しかし、分からなさが、全く面白さを毀損しない。なぜなら、画面がスリルで満たされているからなのだ。という訳で、あらためて、タルコフスキーの画面の力を堪能しました。また少しずつ見直していこう、という気になりました。

(評価:★4)

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