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[コメント] 恋のゆくえ ファビュラス・ベイカー・ボーイズ(1989/米)

大きいイヤリングをつけて、映画のヒロインの真似をした、のはあとにも先にもこれきり。ひさしぶりに再見。記憶の中では、兄弟物and恋愛物、だった作品が、まったくそうではなく、一人の臆病な男の生きる道の話だったことに気づく。
uyo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この話の主人公は、完全にジェフ・ブリッジズですね。彼の視点からしか話が進んでいない。プライベートルームの中が出てくるのも彼だけ。

アパートに訪れてくる近所の少女。帰宅すると迎えてくる黒い老犬。独身男性のロマンかも?重ねてゆうと二回セックスして別れる女性、というのもロマンな気がするよ。一回だと自分の事気に入ってないかもって気がするから…。ぷ。

ひさしぶりに観て、「こんなセリフがあったんだ」と胸に届いたのは、スージーの

「あなたと会ったとき、負け犬だと思っていたけど、そうじゃない。臆病者よ」

と言うもの。これを言われたらきついよなあきっと。「負け犬」と「臆病者」と、「負け犬」を受け入れるほうが楽だものなあ。だって、俺のせいじゃない、もんね。でも、本当に彼が負け犬だったら、スージーにあんなふうに噛み付いたりしない。(今風に言うと逆ギレですね)お前が闘うべきはそっちじゃないだろう。

お兄さんやスージーといっしょに一流ホテルを回る仕事だって、悪くないと思うんですけど、この話の彼はそれを選ばなかった。薄暗い地下でピアノを弾くことを選んだ。その良し悪しは、ほんと、本人にしかわからないですよね。まあ、本人にもそのわけはわからないのかも。どの生き方が「正しい」かなんてさ。でも、一度しかない人生だから、迷いながら、周りに「ごめんなさい」を手を合わせて、背負ってゆく。そんな生き方もあるのだと思う。それがあれば、深夜放送でピエロになることだって同時に出来るのだと思うよ。

カメラマンバルハウスの仕事の中では、この作品が一番好き。印象的なショットは、落ち込んでいる少女に会いに、アパートの屋上に行ったところのラスト。夜のシーンがメインのこの話で、突き抜けるような明るい空と主人公が、冷たく、あたたかく突き放すようにロングで撮られている。

「歴史に残る名作」と言うわけでもないし、ひさしぶりに観るとちと恥ずかしくもある。しっとりと自分の好みに合うなあ、と言う小品だけれど、DVDを買ってしまいました。次はいつ観るのかな。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)Orpheus

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