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[コメント] アフリカの光(1975/日)

雪の積もった道や線路の上など、萩原健一田中邦衛が2人で歩くショットを繋げるオープニング。キリンが数頭、画面を横切るセピア色のショットが挿入される。後にヌーの群れのショットなんかも。
ゑぎ

 これは2人がアフリカに行くことを夢見る映画。アフリカ行きの遠洋マグロ漁船を待つ映画だ。キリンなどの挿入はフラッシュ・フォワードと云うべきか。

 冒頭近く、飲み屋で峰岸徹らに絡まれ、外に出て殴り合うまでを手持ちのワンカットで見せるショットなんかが特徴的だが、基本、同様の演出が続く。その場面の空気をまるごと映そうとするような姿勢だ。同一シーン内でカットを変えて異なる被写体のショットを繋ぐ場合も皆無ではないが、切り返しは無い。科白は多分全てアフレコで、終始つぶやくような科白の応酬が続く。特に、田中が体を壊して、萩原が介抱したり、ちょっと良くなった田中と銭湯へ行ったり、という場面の男2人のベタベタした芝居の部分は、この演出基調が奏功して(というのか相俟ってというのか)、画面の熱量が半端ないレベルになるのだ。

 主要人物は、主演者2人と峰岸の他に、バー(?)のホステスの桃井かおり、その情夫でヤクザの藤竜也。田中が早朝から真面目に働く漁船の船長−吉田義夫の孫娘−高橋洋子。このあたりか。桃井は登場シーンからボックス席で客と本番しているのだと思うが、田中とも萩原とも寝る女を、これも温度の高い演技で好演している。藤竜也はイマイチ中途半端な扱いだが、彼にも萩原とベタベタする場面があって、本作の一貫性に貢献する。高橋はこれも位置づけがよく分からないが、しかし、ラストまで絡んで、彼女の存在は傍観者の突き放した視点の感覚が出る。

 峰岸も要所で顔を出す良い役だが、遠洋漁業に出ている漁師−小池朝雄の妻−絵沢萠子と関係する間男の場面もいいし、終盤、萩原が、峰岸らの漁船に乗せられ、責められる場面は書いておくべきだろう。舷側から、海へ半身を放り出された萩原が、手が凍ると云うと、今度は手袋をした手に火をつけられる。こゝは、全編でも最も強烈な演出じゃないか。これに峰岸が絡んでいるのがいい。

 とはいえ、何と云っても本作は、萩原の魅力を定着させるために撮られたような、ある意味、彼のためのアイドル映画のようだ。ただし『青春の蹉跌』をさらに泥クサくしたようなねちっこさで、より神代らしさはこちらの方だと感じる。本作の萩原がつぶやくように唄うのは、なぜか河内音頭だ。

#警察署長役で河原崎長一郎、医者役で藤原釜足。藤原のアフレコは別人か?

(評価:★3)

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