その日、お友達に会いに行くという母ちゃんに付いて行かされた俺と妹だったが、母ちゃんは、俺と妹だけ映画館に押し込んで、その友達のおばちゃんと二人、喫茶店でもどこでも行けばいいものを、そのおばちゃんはとてもいい人で、母ちゃん共々一緒に観てくれることになった。

　映画は、ご存じの通り、麻薬がらみのすげー話で、死に際のパンダみたいなサモ・ハンに、社長の不気味な強さに、何と言ってもラリって暴れるユキーデがめちゃめちゃ恐ろしく、クライマックスの大立ち回りもやたらめったらハード、おまけに最後の赤いプールに社長が突き落とされるシーンなんかは気持ち悪くすらあり、こんな不健康なジャッキー映画ってあるものかと、正直、ちょっと退き気味で観ていた。

　しかし、さらに退いたのは、そのおばちゃんに感想を訊ねたときであった。彼女は笑顔でこう言いきった。

　「やっぱり、ジャッキーは健康的でいいわね！」

　大人って怖いよ…と、つくづく感じた小学校六年のゴールデンウィーク（だったと思う）。

　でも、麻薬は怖いもんとして描いて当然だよな。ジャッキーは正しい。いや、サモは正しい。二人のおかげで、おいらは手を出してないぜ！