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[コメント] オーディション(1999/日)

M男くんも真っ青の鍼治療プレイ(キリキリオプション付き)。
クワドラAS

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ラスト30分に於ける急転直下の展開は、夢か真かどっちなんだなんて整理する暇すら与えない位にサディスティック。この女、体を切断するわ舌もちょん切るわ針地獄に至らしめるわ、お前は閻魔様かと言いたい。でもこれは男にとっちゃまさに地獄ですよ。子供の頃に受けた虐待が、やがて成人してから突拍子もない形のサイコパスへと変貌を遂げるというのは新鮮味はあまりない。だが、ストーリーテリングの巧さ・絶妙な配役・そして暖色系と寒色系のライティングを好バランスで使い分けた映像が抜群。

業界系の立場を生かしてオーディションで嫁選びというアイデアがまず面白い。主人公の男は7年前に妻に先立たれ、身近な存在の死に直面している。そのオーディションに応募してきた数千人の中のある一人の女。その彼女は、面接用の作文から、死というものと向き合いそして苦しみを乗り越えようとする上品でありながら芯もしっかり持っているようだった。歳も歳だし再婚に失敗したくない主人公は、そんな彼女に接点を見出す(どことなく亡くなった妻と彼女の雰囲気が似てるというのも惹かれる事に説得力を持たせてる)。息子も彼女らしき子を家に連れてきたし、「よし、俺も!」と思うのも自然だろう。オーディションをお膳立てしてくれた友人の話・忠告が徐々に左から右へと聞き流れていく様子も丁寧に描かれ、地獄行きの切符はもう主人公の手の中で握り締められているぜみたいな。「私だけを愛してくれる?」と、初めての旅行で宿に着くなりいきなりがんじがらめなベッドインを懇願する彼女。ここでたぶん主人公は初めて?を感じたはずだ。俺のリードでベッドインの筈が、ちょっと待ってくれよと。なんか違うぞと。だが主人公は目の前に横たわるスレンダーな肢体に屈し、ちょっとあやふやながら「ああ、君だけを愛すよ」と発してしまう。うんうん分かりますよ、その状況ならねぇ。でも俺ゃしらねーぞーと、どんどん盛り上がって行きます。まだまだ続きますよーと。

この様に、中盤過ぎまで丹念に主人公ののめり込みぶり&それとは逆に徐々に湧いてくる彼女への疑念を積み重ねる事によって、あの衝撃的終盤が生きてくるんだな。

イカレた女を描いてるようで、グロく痛々しいシーンが注目されるようで、でも本当は男のどうしようもない性(サガ)をこれでもかと言わんばかりに描いている作品だと思う。スリラーとしても一級品だ。

まあでも俺ならオーディションであの女は確実に選ばないけどね。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ExproZombiCreator[*] けにろん[*]

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