[コメント] 盲獣(1969/日)
この倉庫のドアを閉める千石のショットが、アクション繋ぎで少し寄ったショットに繋がれる編集に特別感を覚える。本作は千石と緑魔子のキャットファイトの後、千石が退場してしまうまでが良かったと思う。船越と緑が2人きりになってからの終盤は飽きが来てしまった。前半感じた強い刺激も馴化してしまったように思う。
何と云っても、真っ暗な倉庫の中で、緑魔子の顔だけが浮かび上がるショットから、彼女にライトがあてられるとその背景には大きな目のオブジェがいっぱいあり、さらに、沢山の鼻梁、口唇、脚、腕、耳、乳房と続き、倉庫全体の電灯がつけられると、ありえないような大きさの女体の彫像(ゴム製?)が横たわっているスペクタクル。この直後の緑魔子の科白「あなたはキチガイだわ」に激しく首肯するこのシーンの造型の嘘っぽさが、間違いなく映画としての華だろう。
全編通じて、ほとんど切り返しは無し。特に船越と緑に、個別のバストショットなどの切り返しらしいものは皆無だったように感じる。ほゞツーショットか、あってもいずれかの背中越しのショットの切り返しだ(2人とも画面に大きく入っている)。これは、最初からこの2人が一蓮托生であるという感覚を植え付けられる効果がある。
尚、緑魔子のヌード写真(スチル写真)で始まる映画だが、本編実写映像の中で、彼女のヌード(より直截的には乳房、乳首の露出)は巧みに回避され続けるよう所作の演出がつけられている。船越が乳房を揉むシーンは多数あるが、彼の掌で隠される。あるいは、彼女自身の腕によって乳房は覆い隠される。もっとも、終盤になって、ずっと上半身裸の状況になるので、多少は乳輪も映るのだが、それにしても、期待に比べて僅少と思う。本作終盤は、2人の変貌のメンタルが省略し過ぎているとか、本来大量に流れ出たであろう血液が隠蔽されているだとか、いろいろとケチのつけようもあると思うが、私はこれらはどうでもいい。見えそうでなかなか見えない緑魔子の乳房に関する演出こそ重要だと思う。正直に云うと、バーンと見せつけるようなスペクタクルの方が好みだが。
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