[コメント] 黒の超特急(1964/日)
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中盤、田宮二郎は吠える。「俺はカネがほしい」「見ろ東京を。ビルは次から次へと建ち、高速道路は走り、レジャー産業は全盛だ」「この世の中を誰が支配している? 誰が愉しんでいる? 大企業、昔なら大名だ」「俺たちは何だ? 百姓町人さ。サラリーマンは一生うだつの上がらない虫けらさ。俺はそんな惨めな生き方は厭だ」「カネを握り事業をやり、大企業と肩を並べたいんだ」。藤由紀子も同意する「アタシもお金がほしいもの」。
という悪漢ものなのに、最後に田宮は警察に訴えて加東大介を逮捕させる。代議士や公団も、珍しく証拠があるから明るみに出るだろうと語られている。天の配剤、狡知により汚職事件は解決する。まさにアッと驚く結末で、悪漢が官憲に寝返るなど普通はあり得ないだろう。しかしまあ、カッパノベルズにあれこれ難癖つけても仕方ないという気にはさせられる。
冒頭は庭瀬という駅。桔梗不動産田宮二郎を訪問する東西開発加東大介。わての云う土地買うとくれやすの工場進出。20万坪、坪4千円で8憶(これを坪7千円に引き上げる)。田宮には手数料坪120円。三星銀行がついてまんねん。地主口説いてほしいんです。旧家出身で地主連に顔広い田宮。手付金のうえで握手。新幹線で地主連れて東京で契約。補償小切手で渡される。第二次新幹線計画、坪4万5千円で5万坪、新幹線公団に売ったくせに、と補償金元手の投資で督促に追われる(キャバレーの女にバー買ってやる等)地主から指摘される田宮。
田宮対加東が始まる。「あんたは新幹線の先買いをやったんだ」「恐喝で豚箱にぶち込んでやる」加東は旧国鉄出身。事務所に金持って出入りする藤由紀子は新幹線公団の重役秘書。加東と重役船越との仲介をしていたが、加東に船越との仲を精算され、報償を渋られて田宮に乗り替える。「図々しくて抜け目のない処が気に入ったわ」。こういう科白はカッパノベルズっぽくていい。
彼女の回想。加東は藤に船越を誘惑させて、それで船越を強請って予定地を聞き出す。そして船越の妻の父は代議士石黒達也、三星銀行の融資を強請る。「私は野良犬みたいなもんで、先生となら喧嘩するだけ得ですがな」「君、わしの口利き料は高いぞ」で儲けの半分。代議士4憶、加東と船越で2憶ずつ、藤は1千万円の儲けと判明。
代議士は危機感持ち始め加東に「やりなさい」。代議士の常識により子悪党加東は藤を絞殺すのだが、この件に何の悲哀もないのが詰まらない。巨悪がかむと殺人にまで軽くエスカレートする異常さを、加東の造形は捉えていない。
管理人が上田吉二郎とういう恐ろしい安宿は神田にあり、藤のマンションは赤坂。原作は「夢の超特急」光文社。助監督は帯盛。藤は好演。不安をあおる単調な音楽が効いている。
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