[コメント] アナザヘヴン(2000/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
この映画は、映画館で観ました。到着したのは、開始時間ぎりぎり。まずいよー、もう上映が始まるよー、と、他の観客の邪魔にならないようによ静かに入ったら……。
誰もいなかった。
あのときは、本当に唖然呆然。確かに、僕が住んでるのは田舎だし、その日最後の上映だったし、邦画でR指定だから観客は少ないだろうけどさ。僕以外一人もいないなんて……。
でも映画館を独り占めした気分もあって、まあ、悪くはなかった。
……すみませんね、まぎらわしいコメント書いて。映画そのものに驚いたわけじゃないんです。
さて、エピソードだけで、内容に触れないのは好きじゃないので、批評も書いておきましょう。この映画は、理屈を越えた魅力がないってことが最大の弱点だと思います。
悪いことは嫌いだ、と言いながらも、みんな刺激的なことを求めている。このテーマはいい。「人間の醜さ」を描いた物語は他にもある。漫画の『デビルマン』なんか僕は好きだ。だけど、この映画はあの漫画みたいに伝わってくるものが無い。何だかもの足りないんだなあ。
何故だろう?
おそらく、哲学的過ぎるからだと思う(惹句に「悪の哲学」とあるくらいだ)。繰り返すが、テーマそのものは悪くない。哲学的というのは、そのテーマを言葉(台詞)でもって説明しているということだ。
僕はあまり「説明的。」とかいう批判はしないんだけど、この映画は珍しく、説明的であることが気になる。
何でも、カリスマと言われる人たちは、理屈によって他人を動かすわけではないらしい。理屈は理屈でもって反論されるからだそうだ。理屈にならない魅力で他人を動かすのがカリスマらしい。
この映画もそう。言葉で問いかけるから、理屈による反論が浮かぶ。「フィクションの殺人を楽しんでいる人が現実に殺人をしたいと思っているわけじゃないだろ。」とか「殺人のドラマを見なかったら、人間は不満がたまって殺人を犯すのか?」とか。
もちろん猟奇殺人の現場はとてもえぐい。これは理屈を越えた迫力がある。でもそれが、テーマとうまく結びついていない。その証拠に、あの料理には何の意味があったの?と疑問のコメントがある。このような疑問を抱かせるようでは、映画として足りない。まして、理屈を越えた感動がある映画というのは、多少の矛盾や説明不足があっても有無を言わさぬ力があるものだ。
あの料理はですね、殺人犯はあれを食べていたのです。つまり、殺人犯にとりついたナニカは、悪いことばかり考えている人間の脳が大好きだったわけですな。カニバリズムが愛情表現だというは、猟奇殺人ものでは、ときどきあるらしいです。よく知らないけど。
僕は原作を読んでいたが、原作もあの料理とテーマがすぐには結びつかなかった。上に書いたことは、原作を読んだ後、しばらく時間がかかってやっと気付いたことだ。
僕の記憶違いかもしれないが、映画は、それにわをかけて、わかりにくかったと思う。映画では脳味噌の料理が映されるばかりで、殺人犯がそれを食べていた、ってことがわかりにくかったような気がする(記憶違いだったらごめんなさい)。だから疑問のコメントが出るのかもしれない。
理屈ではなく、圧倒的な迫力でもって、人間の醜さを表現すればよかったのだ。
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