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[コメント] バウンティフルへの旅(1985/米)

80年代末からVHSで何度も観て、今世紀にはDVD-Rに勝手に焼いて何度も観てきた大好きな映画。
ペンクロフ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







国内盤BDがついに発売されたので買って観た。高画質で観ると、1940年代後半の時代再現が際立って見える。その時代の婆さんのノスタルジーの話なので、婆さんは19世紀生まれ。故郷を離れたのは1920年代だ。

「バウンティフルへの旅」は元々50年代のテレビドラマで、主演はなんとリリアン・ギッシュ。ブロードウェイで舞台化され、これもギッシュが演じたらしい。85年の今作はその映画化。20世紀の白人映画の限界で、テキサス州が舞台なのに黒人がひとりも出てこないのはいかにも不自然だ。映画は白人社会の中の白人のドラマ(だけ)を描いており、まるで黒人は存在しないかのようだ。これはねえ、たとえいい映画であってもスパイク・リー先生には怒られるシロモノです。黒人の方々には、怒る資格があります。

2014年にアメリカのテレビ映画として作られたリメイク作品はこの構図をひっくり返し、登場人物はみな黒人キャストになった。それもよさそうだよな。機会があれば観てみたいものだ。「バウンティフルへの旅」は誕生から半世紀以上を経て、黒人の物語としても語られるようになった。なんというか、映画史の中に感慨を覚えます。

わたくしはジェラルディン・ペイジが演じた老婆が好きなんだけど、現実にこのような人が身内にいたらあんまり優しくできないと思う。下手な賛美歌を毎日聞かされ、焦点のボケた長い思い出話を聞かされる。ババア黙れよ、いっそ楽にしてやろうか、と口には出すまいが内心では思うことだろう。ところが映画で観る老婆はチャーミングで素晴らしい。バスの出発シーンなんか喜びに輝いている。オレは登場人物の中では性格の悪い嫁に近い人間だと思うが、映画を観てる間は全然違うんだ。心優しいレベッカ・デ・モーネイの気分で観てる。これが映画の魔法だと思う。

(評価:★5)

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