[コメント] EUREKA(2000/日)
被害者と加害者、現実と現実逃避。それらを要素とした疑似家族が、社会隔離のきっかけとなったバスに乗り、過去を振り返る為に現実社会へ向け旅立つ。行き着く先は広大な自然。030917
佐賀バスジャック事件の直前に公開され、一部で、「なぜこの事件を利用して宣伝しない?」と揶揄されていたから、 バスジャック自体がメインかと思ってたが、そっちはきっかけに過ぎず、 最近良く聞く、PTSD(心的外傷後ストレス障害)がテーマである。
疑似家族というのは、好きなテーマなのだが、 大抵は、「疑似家族の幸せな空間=現実逃避」が 「離散=現実へ」という展開をするのに、 この作品は、敢えて疑似家族のまま現実に立ち向かうところが非常に面白い。 また、かなり重いテーマを扱っている割に、 随所にユーモアのあるセリフや描写が散りばめられていて、 案外、3時間37分も飽きない。 旅に同行する大学生の、心理学などから得たにわか知識で現実を講釈してみせた挙げ句の顛末や、 「なぜ人を殺してはいけないか?」という、90年代の問答もひょっこり現れたり、 なかなか現代ネタを取り入れているような芸が細かい。 何より、個人的には同じ部類かと思ってた黒沢清のような、 「いかにもな暗喩を散りばめただけの安さ」ではなく、 濃厚な描写で紡がれた「無駄のなさ」が評価される。
難をいえば、セリフが聞きづらい所だが、そこは目をつぶろう(笑)。 舞台が九州で、小倉・門司などの北九州ネタ・方言が出てきたりするのが、 西日本出身の私にはちょっと嬉しいところ。 あと、阿蘇周辺などの風景の迫力も見逃せない。 日本にだってこんな背景はちゃんとあるのだ。
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