[コメント] インテリア(1978/米)
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ウディ・アレンのコメディはイジケ要素が多くてイラつくことが多いが、本作は身内らの抑えた感情が見え隠れする様がとても良い。
四角く区切られたガラス窓から見える海岸。これは後に重要な風景となり寒々しい砂浜と波が印象的だ。窓ガラスがいくつものシーンで眺められる。人にはいくつもの衝動や思いがあり、「家」という形を保っているのだろう。
整然と整えられたダイニング、しつらえひとつひとつに気を配られた部屋、フリンがヤクを吸う車内のライトさえ、いや、その後のガレージのライトさえ満たされない冷たさがある。
アレンは出演してはいないものの、容姿の若干似ているサム・ウォーターストンに、もっとなにかしらのアレン的投影をさせたかった気もする。繊細過ぎるジョーイメアリー・ベス・ハートの伴侶としては少し物足りない気がする。
イブとパールの対比が素晴らしく、ベルイマンへのオマージュとされながら、やはりこれはアレンならではの演出と感じる。ここにあのパールを持ってきた!カラフルなドレスを身にまといあっけらかんと動き回る中年女性。BGMを排した静寂の後でのダンスシーン。濃い色のローブで海岸を走ってくるパール。静と動の対比が「内面(インテリア)」を象徴している。
全体にスモークのかかったようなカメラワークだからこそ、パールの色味が効果的だ。冷たいガラス窓に手を添えても、外側に届かないもどかしさ。ベルイマンを模したのだろうが、アレンの傑作だと思う。
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