[コメント] グラディエーター(2000/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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『ベン・ハー』などの古代ものの大作を現代版にリメイクしたかのような迫力は圧巻。
ただ,この作品の隠れた主題は”人間の愚かさと弱さ”だったように思えた。
実力もないのに皇帝になったあげく苦悩するコモドゥスはもちろんだが,彼の表面的な人気取りを見抜けず,殺し合いに一喜一憂する大衆がいかに何も考えていないか,そして,それぞれの立場から新皇帝に接する元老院の議員たちの多くも実はコモドゥスと大差ない,という描き方には実に考えさせられた。
もちろん,この頃の一般大衆は「民主主義」などという理念は理解できなかったろうし,実際に大衆が何を考え,何を望んでいたのかは映画では描かれていない。しかし,新皇帝コモドゥスや元老院議員などの言葉の端々から想像できる大衆は,目先の楽しみを追うだけの存在であるかのようだった。
また,コモドゥスの姉にしても興行師にしても,映画の終盤には,いいヤツとして活躍するが,必ずしも最初から信念を持ってあのような行動を取っていたというより,それぞれ運命に翻弄された結果であろう。
では,主人公マキシマス(ラッセル・クロウ)は,そういう愚かな人間に対するアンチテーゼだったのだろうか?と言えば,必ずしもそうではなかったと思う。もちろん,新皇帝の下でのローマの行く末を案じ,強い意志と強靱な肉体を持っている彼は決して愚かではないが,理不尽に殺された妻子の復讐を誓い,新皇帝を殺そうとする彼の思いは極めて純粋な愛情から出ており,特別に理性的な存在として描かれていたわけではないと思う。
ところで余談になるが,映画から離れて,表面的なパフォーマンスが国民に受けて異常に高い支持率が続いている現在の政権を見ると,現代日本の民度も,この作品で描かれている大衆と大差ないように思えるのだが…(^_^;)。
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