コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] セックス・チェック 第二の性(1968/日)

いつもの劇画タッチの演出が詰め込むだけ詰め込まれているが
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







増村は『青空娘』の昔からスチュワーデス物語まで、劇画タッチの演出で一貫していた。彼がイタリアから持ち帰ったのは、行間で語らず自己主張をしまくる少年ジャンプ系劇画タッチの演出だった。若尾文子という、どんな劇画でもリアリズムにしてしまう才能が傍らにいなくなると、これが不自然・抽象的・露骨に現れてしまうことが多くなり、本作などその典型だろう。

しかし本作、興味深いことに、劇画タッチで最後まで運んでおいて、ラストで反転させている。劇画で描かれるのは南京大虐殺(増村はつねに認めている)、オリンピック、国家の威信などの「獣のような」肯定であり、発狂した小川真由美の歌でもってこれをグロテスクに総括したあと、ふたりはさらりと身を引き、男女の世界に還ってゆく。このラスト、劇画タッチの演出を自ら放棄したような驚きがある。

昨今の夢だ希望だという空語の先には、運動選手ならオリンピックがある訳だが、夢が破れたらどうするのか誰も教えてくれない。記録がでませんでしたからサヨウナラという緒形拳の潔さはこのパロディとしてとてもよく効いているし、仕掛けよろしく、そうだよなと誰をも納得させてしまう。これほど後味がよい増村作品というのも珍しいと思う。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。