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[コメント] ひかりのまち(1999/英)

ナイマンの傑作スコアがロンドンの街に色彩を吹き込む
dappene

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







監督のポリシーのせいで、かなり生々しく切り取られたロンドンの街が、延々と映し出される。そこに住む人間らしい人間たちは、目先の現実と格闘し続けている。

物語性に乏しい展開、苦々しいエピソードの連続にもかかわらず、途中何度も暖かめの涙がこみ上げてきたり、見終わったあと、心に残り続ける好印象は、一体なんなのだろうか。

音楽だ。

ためしに、i-podにモリー(http://www.amazon.com/exec/obidos/ASIN/B00002DEBI/qid=1110048332/sr=2-2/ref=pd_bbs_b_2_2/104-9814207-0736748)を入れて街に出てみた。地下鉄、タクシー、行き交う人々。見慣れた東京の風景が一変し、理由も無く感動的になっていた。

この作品においてもマイケル・ナイマンの音楽が何かを変えたのは間違いないだろう。

途中、ジャックが父に連れられサッカーの試合を観にセルハースト・パークにいくシーンがある。ここを本拠にするサッカークラブ、クリスタル・パレスはなかなか1部リーグに居続けられない弱小チーム。「たまにはアーセナルとかもっとましなのを応援しろ」と文句をいいつつ、その弱小チームを応援しているさえない父子。この絶妙のリアル感がこの映画のすべてなのかもしれない。

スタジアムや移動遊園地の花火という幻想とそれ以外の現実。このコントラストが監督の狙った「不思議の国のアリス」なのだろうか?

もし、マイケル・ナイマンの叙情的な音楽がリアルな風景に奥行きと印象を付け加え、ロンドンをWonderlandへと昇華させているとすれば、これほどに映像と音楽が巧みに交じり合って、映画の縦軸となっている作品は、滅多にお目にかかれないかもしれない。

(評価:★5)

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