[コメント] パトリオット(2000/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
パトリオットっていうのは「愛国者」、ナショナリストは「国家主義者」なんて辞書にはある。
でも、"patriot"っていうニュアンスは、国土とか国民に対してのものであって国家に対しての感情じゃない。
もっというと、自分の暮らす土地や家族みたいな原初的な部分に根ざしているニュアンスがあると思う。 たしかにベンジャミン(メル・ギブソン)は、自分たちの生活する土地が戦場になること、土地の人や自分の家族が危険にさらされることを嫌って、戦争を避けようとする。これはたしかにパトリオット的なんだろう。
それに、次男が殺されたことで、結局ベンジャミンはパパからゴースト(不死身のトマホーク・マン……これもミサイルの名前だ)になっちゃう(というか戻ってしまう)わけだけど、三男坊四男坊の健気さと相まって、彼は真っ当な“パトリオット”だったと思う。
民兵の指揮官として鬼神の活躍をしても、チェスのコマに“祈りを込めた”の弾丸で士官への狙撃をくり返しても、パパは、まだまだ“パトリオット”だったはず(私怨じゃないか、って気もするけれど、そもそもパトリオット的価値観自体が、そういうプリミティブな感情に根ざしてるんだろう)。
ところが、長男坊(ヒース・レジャー)が民兵募集に行った教会で、後に彼の妻になる女の子が演説をしたあたりから、映画自体のトーンがどんどん“ナショナリスト”に急旋回していくのを、マイホームパパ一人では止められなかった。
……それに比例して、見てる方としては気持ちがだんだん冷めていってしまった。
そして、星条旗をお針子仕事でチクチクやる描写がくり返し出てくるようになってからは、パパ自体もどんどんナショナリスト的転回をみせていくし、国旗を翻して登場したときには、もう立派な“キャプテン・アメリカ”のできあがりだ(戦時昇進で大佐だったけど)。
「国生み」を経験したことがなく、これからも永遠に経験することのないアメリカという国は、自らの国と社会のアイデンティティーを、星条旗というイコンや「アメリカの正義」に求め続け、こうして具体的な形にし続ける作業を止めることはできないんだろう(となると、あれだけの残酷描写をやってR指定(アメリカ)にしてしまう必然性が、余計に理解できないのだけれど)。
--
クライマックスに向けてのシークエンスでは、星条旗が出てくる度に「イ〜ンディペンデンス、、、デ〜〜〜イ!」と大笑いしながら見ていた。
一緒に見てた人が感動したがりで、涙もろい人じゃなくてよかったです、ホントに。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。