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[コメント] 恥(1968/スウェーデン)

必ずしもベルイマンの個性を発揮させている題材とは言い難い気が。しかし、時折非常に印象深いセリフにハっとさせられる。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「実感が湧かない、他人の悪夢の中に出演させられているようだ。もし彼が目覚めたら~」みたいなリブ・ウルマンのセリフ。どうしてもベルイマンだけに、その彼とは「神」を連想してしまう。眠り沈黙をしている神が目覚める時、罪深い私たちなどそもそも存在しないものとして消え去ってしまうのでは・・・なんて想像をしてゾっとさせられる。

やはりベルイマン映画の空気は、具体的な意味でも抽象的な意味合いでも、「場」が狭まり限定されればされる程濃度が濃くなり、こちらを酸欠に陥らせる気がするので、いくつかの閉塞性の高い場から場へと渡り歩く本作は、さながら地獄のような内戦の風景とはいえ、そこまでの窒息感はない。個人的には「島」という隔絶された場というものを、もっと強調してみてせも良いのではないか、と思った。

ただ、教会の鐘をはじめとした音の扱いのアイディアは面白いし、まるでそこに何かがあるかのように、時折主人公たちの上にある空を映し出したり、巨視的は視線で遠景の人物を映し出すカメラなどに、らしさを感じることもできる。そして何よりも、病的なまでに行きつ戻りつを延々と繰り返し続けるウルマンとシドーの演技が、「逃げ場などどこにもない」という確かな実感を映画に与えている。

(2005/11/09)

(評価:★4)

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