[コメント] 酒とバラの日々(1962/米)
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冒頭のラブコメは不評のようだが私は好きだ。「天国でも一緒」なんて素敵じゃないかと思っていたらこれが暗転する。
この時点でふたりの障害と目された当時の広告業界への批判が、話の途中から忘れ去られるのはなぜだろう。ただの勝手な想像だが、アルコール広告のえげつなさを後半に叩き付けるつもりだったのが、製作サイドから待ったがかかったのではなかろうか。
それと気になるのが最初のデートにおけるゴキブリ騒ぎ。これは当然、後半のアル中幻覚のネタ振りだとみていると、最後まで何も顧みられなかった。さらに勝手な想像だが、ジャック・レモンはこのときすでにプチアル中で、アパートの騒ぎは幻覚ではなかったか。さらに云えば、リー・レミックが一転デートの申し込みを受けるのも、幻覚ではなかったのだろうか。まあ、まさかそんなことはなかろうが、そういう不思議な演出がなされているのは確か。後半の急展開に向けての観客への刷り込みということなのだとしたら、高級な演出ではないだろうか。
中盤以降も何かこの不思議なタッチが続けられ、シャワーを間に挟んでのふたりの狂乱の対照など物凄いものがあるが、檻の中にいると思いきや数カット後には更生してリー・レミックを諭すジャック・レモンのカットなど驚きで、ただ話が走り過ぎというだけではない、奇妙な味の編集であった。
本作の白眉はやはり、「ちょっとした人生の潤い」から温室の狂乱に至る件だろう。幸福の暗転に茫然とする。昨晩もつり革に片手でぶら下がって首から下は地下鉄の揺れに揺られっぱなしの酔っ払いをみたばかりで、彼がもし社用で酒浸りになっているなら気の毒なことだと思う。本作、煙草の規制には思い至っていない演出が、いまみるとこれも不思議である。
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