コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 罵詈雑言(1996/日)

語りつくせない、思い出の映画。
neo_logic

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







15年も前になりますか。高校生のころのある日。町中に奇怪なポスターが貼ってあったんですよ。

どうも映画の宣伝らしいのですが、イラストの一枚絵で緑と赤のイレズミみたいな取り合わせの色合いで、奇怪な笑顔を浮かべた人の顔が並んでましてですね。

その上から墨で書いた手書きのお札みたいなのが貼ってあって、 「失神者続出」だの「来る前絶対食べて来ないで」だの、「原発のある村。女教員は便槽の若い青年の腐乱死体を愛していた・・・」だの、そんなけったいな事が書いてあるんですよ。

どうも「バリゾーゴン」という映画らしいのです。

一体全体こりゃなんだと思いましてね。自転車で登校する途中の道路に立ってる電信柱のうち、3本に1本にはそれが貼ってあってね。いやもうそれが不気味で不気味で。

でもう高校に着いたら、当然そのバリゾーゴンが話題になってましてね。休み時間ともなればバリゾーゴン、バリゾーゴンとひたすらバリゾーゴンの話になるわけですよ。

挙句の果てに、その気色悪いポスターをかっぱらってきて、サンドイッチマンみたいな格好で校内を闊歩するバカまで出てきたんです。あまりにも不気味なんで、もうギャグにしてしまえってなってね。私じゃないですよ。私よりもっとバカなのがいてね。

で、その映画、翌週の一日しか上映しないらしくってですね。どうしたもんかと。

グロ苦手なんで行く気にならなくてね。しかもリアルのスナッフムービーみたいなのを予測していたので、そんなもんそもそも人としてどうなのって思ってね。

でも友達に二人度胸があるのがいて、行くって言い張るわけですよ。

で、上映した翌日。

見に行った二人ともが、じーっと下を向いて、話したくないって言うんですよ。こりゃあ一体何があったんだって話でね。

みんなで取り囲んで話せ話せって大合唱するんだけど、片方はガンとして口を開かない。もう片方はパンフレットを買ってきて黙って渡しましてね。

内容を読んでみたんだけど、なんだかよくわからない。原発反対みたいな内容でした。「表現はあくまで自由」という文字が妙に目に付きました。

結局のところ、内容は単なるドキュメンタリー形式の作品で、スプラッタやホラーとしての要素は全くなかったとのこと。騙された観客の怒号なんですよ。バリゾーゴン。

つまり、これは渡辺文樹監督のいわゆる「見世物小屋」的手法であり、友人二人は見事それにひっかかったわけです。

二人が真相を最後まで言わなかったことについては、その手法を完全に理解していたからでしょう。ある意味大正解です。たしかに、ネタとしてはこれ以上ないくらい上出来でしたからね。

ちなみにその時のパンフレットはなぜか私の手元に渡っており、数年前の同期の集まりで本人に渡したところ、大喝采となりました。

渡辺監督はその後も同様の手法を繰り返し、各地の公民館で上映会をやっては、バカヤロー! 金返せ! の怒声を受けているそうです。

インターネットの時代になり情報が公開され、こういう都市伝説的なやり口が徐々に減っているのは少しさびしいことのようにも感じます。

今でもときどき、「バリゾーゴンってどんな映画なんだろう?」と友人たちと興奮しながら語り合った事を思い出すことがあります。

そしてちょっと前に、ついに見る機会を得ました。とてもつまらなかったです(笑)。

(評価:★1)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)荒馬大介 サイモン64

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。