[コメント] ソフィーの世界(1999/ノルウェー)
哲学はファンタジーか?
否。…と取り敢えずは言えるだろうけれど、では「哲学」とは何なのか?と問うてみても、そこに答はないだろう。それが「哲学」と呼ばれてきた知の営みの本質なのだと思う(*)。
この映画はつまらない。原作も興味が湧かず読んでいなかったけれど、やはり読まなくてもよかった。
哲学史は教養でも有り得るが、問いかけること自体は勿論教養ではなく知ることを希うところから始まる実践だ。本編のソフィーちゃんは謎の手紙に触発されて、「私は誰?」やら「世界は何処から来たの?」なんて疑問を口にし始めるのだが、如何せん彼女には世界の謎を謎として真底不思議がってそれを真から知りたいと希う主体性が、魂が(!)欠けている。その為ファンタジーにちょっぴりミステリを加味した物語は何ら知的探求の緊張をもちえず、教養としての西洋史を上っ面だけ、極めて俗っぽく閲覧させるだけの三流の教養映画となってしまっている。多分、原作もこうなんだろう。
ラストはひどい。イデア説とは、そんなものではないだろう。多分原作などよりもプラトンの対話篇あたりを直接読んでみた方がはるかに面白いはず。
*)永井均という日本人の哲学者に言わせれば、「哲学は、他のだれもその存在を感知しない問題をひとりで感知し、だれも知らない対立の一方の側に立ってひとりで闘うこと」らしい。それは本来は徹頭徹尾孤独なものであって、予め存在する問題をめぐる対立のどちらかに荷担することではないのだ。その孤独はモノを創り出す者の孤独と同種のものだと思う。
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