[コメント] フォロー・ミー(1972/英)
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この時代のファローは単に若いってだけでなく、見事にヒッピー風の立ち居振る舞いがよく似合う。当時のヒッピーの最大関心は、奇しくもレノンがいうところの「LOVE & PEACE」。金とか忙しさよりも、二人で一緒にいて愛を語り合い、世界について考えを巡らす。ある意味社会生活を念頭に置いてない生活を理想とするのだが、ファローがやると、それが嫌味無くするっと入ってくる。大分前に『パリの恋人』でヘップバーンが似たような役を演じていたが、これは結構わざとらしかった。それに対してファローはそのまんま自然に役作りが出来ている。ここまで役者が自然になるというのも、歴史の流れを感じさせるものだ。
対するジェイストンは見事に旧来の成功者といった姿を彷彿とさせ、生活とは義務と役割分担にあると信じるタイプ。この役をやらせたらイギリス人俳優にまさるものは無いが、見事すぎるほどに典型的な古き英国人!というお堅い役を好演。
そんな二人が結婚して上手く行くとは思えないのだが、それをつなぐ役として登場したトポルがあまりにも強烈なキャラだったため、いつの間にかうやむやのうちに二人はくっつき合ってしまう。ここでのトポルの演技は拍手もの、キャラの立ち居振る舞いや行動など、『ピンク・パンサー』のクルーゾーに似てるような気がするが、到底探偵とは思えないようなドジな事ばかりやっていて、全くそんなキャラに見えないのに、きちんと頭の良いキャラが出来てる。チャールズとベリンダの本当の問題というものをよく分かっていて、重要なところでちゃんと二人に助言しているというところが面白い。そんな自然な演技が見事にはまっていた。この人も実力ある役者だな。
それとやっぱ音楽が素晴らしい。どこか気の抜けたようでもあるが、それが特にトポルとファローの登場によく合ってる。
一方で、この作品では二つの価値観のぶつかり合いということも内包している。1970年代の面白さは、旧来の価値観と新しい価値観のぶつかり合いが非常に明確であること。それを端的に示しつつ、小粋なコメディに仕上げてくれた本作は、観ていて本当に心地が良い。リード監督の最終作品として、充分お薦めできる作品。
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