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[コメント] 夜(1961/伊)

自分らしく生きる
ルミちゃん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







戦争中は当然戦争に翻弄され、戦後の食べるのが精一杯の生活も、自分らしく生きる、こう考える生活には遠いものであった.この映画の撮られた年代は、戦争の傷跡も癒え、食べるだけが精一杯の生活から抜け出し、例えば豊かさとは何か、そう問うゆとりが出来てきた時代、こう言って良いでしょう. 描かれた作家も、そこそこには名が売れて、本も売れ、生活も安定してきて、自分自身の生き方を考えるゆとりが出来てきた.そんなある日、病気の友人を見舞うところから、映画は始まるのだけど. 友人の病状が解った時には、もう手遅れであったらしい.明日のことは分からない、と同時に、友人の死は、必然的に生きるとはどう言うことなのか、考えさせられる.

明日の事はわからない.少し言い換えて、自分の将来に分からないものがある.これは、いつの時代も変わらないものなのでしょうか.時代の変化は激しく、明日何がどのように変わるのか、誰にも予想が付かないものがある.資産家の言葉を借りれば、「明日のことなど分からないよ、一応の抱負はあるが今のことだけで手一杯だ」「未来は不透明だ、今や事業家とて仕事に自身が持てん」、こうした時代に自分らしく生きるとは.

食べるために働くのでないとすれば、何のために働くのか.後悔しない生き方とは. 生き甲斐とは、夢中になって一生懸命に何かをすること.自分を見つめるとは、自分が夢中になれるもの、一生懸命にできることを見つけ出すこと.

自分らしく生きるとは、ある面では、自分のやりたいことを夢中になってすること.夢中になって喧嘩をしてはいけませんが、若者が、一生懸命夢中になってロケットをあげている.何のためにと聞かれても分からないけれど.またある一面においては、自分を見つめ考えること.事業家は、今の社員は会社について何も知らないから、社史を発行して社員教育をしようと考えていたけれど、ある程度の年齢になれば、自分を知るとは、自分自身を振り返ってみることでもあるのね. こう考えると、自分の書いたラブレターを憶えていなかった小説家、どうも自分自身が分かっていないみたい.自分が分からないということは、相手のことも分からない、妻の気持ちも理解できないでいる. 他方、妻は、孤独に浸る.パーティの喧噪の中も、孤独に浸る.孤独とは自分を見つめる事、自分について考えることであり、その結果、別れる決心をした.

(評価:★5)

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