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[コメント] ダンサー・イン・ザ・ダーク(2000/英=独=米=オランダ=デンマーク)

終幕の文字は誰が書いた?
たかひこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







血の通った肉体から放たれた登場人物たちの声とは違う。幕切れにおよぐテロップは、文字通りうすっぺらな紙に書かれた"文字"でしかない。

金があれば回避できていたこの悲劇。冤罪。だから、この文字は死刑制度や(貨幣を中心とした)自由主義経済の批判にとれる。だが、それがそう簡単に唾棄できるものなのか?

何故セルマは、ジェフの誘いを頑なに拒んでいたのか。何故、同郷の医師がアメリカにいて、目の治療がここでしかできない?「あなたは公選弁護人じゃない?」と、嬉しそうに尋ねるセルマ。セルマは知っている。

規則性に裏付けられたリズム。予定調和に満ちた踊りと歌のユートピア。リアリズムの彼岸へ、空想のうえでは飛躍してしまう彼女も、しかし現実にはあくまでも因果応報と必然性の世界を生きた。だからこそ、彼女は、一ヶ月金を貸してくれという"アメリカ人"の男が乞うた慈悲を拒絶し、憤ったのだ。そして、法制度のひずみに落ちながら、なお法制度の網目をくぐりぬける、ちょうど司法取引を逆さにしたような超難度の離れ業をやってみせた。この研磨された"アメリカ的"姿に私は涙した。この涙はあてどなく、霧散して消えた。

巧妙に隠蔽された子の姿。人々は見えていない?人々の視力を取りどすために「死」の結末を選んだ?

だが、盲目なのは誰だ?

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] sawa:38[*]

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