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[コメント] アンジェラの灰(1999/米=アイルランド)

街を描くことは、人を描くこと。歴史を描くことは、人生を描くこと。
あまでうす

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 まず、雨の降りしきるアイルランドの貧民街の映像に圧倒される。 なにもかもがくすんだ灰色やカーキ色で、明るい色彩どころか 艶やかな黒色さえない。すべて冷たく、寒々しくて、暖炉の火さえも頼りない。

 この舞台だからこそ、ずぶ濡れになってはしゃぎ回る子供達が逞しく見える。 吐く白い息に生命を感じる。ほつれた女の髪にあきらめと閉塞感が見える。 酔いつぶれた男達に哀しみを覚える。

 これぞ映像言語。どんなに洗練された文章よりも、ずっと雄弁でした。

 自由の女神を望むラストは、どうやら賛否両論ですね。アメリカが製作に 携わったからあんなラストになったんだぁ、という見方もあるようで...なるほど、 いかにもアメリカ賛美なラストに見えないコトもない。でも、そりゃ勘ぐりす ぎってモンでしょう。

 あの時代のあの国に産まれ育った主人公にとって...つまり、原作の作者に とっての自由の女神は、素直な希望の象徴なんです。それ以外に特に意味はない。 船のデッキから自由の女神を眺めて叫ぶ。「アメーリカ!!」そこには夢と 希望と挑戦心しかない。楽観すぎる? 美化しすぎてる? 21世紀に生きる日本人 にとってはそう思えても、それがあの時代であり、彼の人生なんです。  なにかとアメリカ嫌いな私たちには、ちょっと同感しかねるのはしょうがない ですね。でも、主人公の新しい人生を素直に祝福してやれないってのは、ちょっと 悲しくありませんか?

(評価:★4)

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