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[コメント] BLOOD:THE LAST VAMPIRE(2000/日)

セーラー服と日本刀。

押井守が主宰した押井塾というワークショップから生まれたアニメーション映画。

近過去の裏面を舞台とした伝奇ものということだが、何にも知らないで観てると物語が呑み込みにくいと思う。50分弱の短尺という時間的制約もあるのだろうが、ネタもちとマニアックすぎるのではないだろうか。キャラクター造型はミスマッチの新しさを狙ったにしてもいろんな要素が混在し過ぎていて絵柄も相俟ってふつうの観客には独特の臭いとして疎んじられてしまいそうだ(*)。むしろハリウッドあたりで人気役者をキャスティングしてVFXてんこもりで実写映画にすればウケそうなネタだと思う。

アニメーションとしてはどうなのか。専門的なことは知らないが、印象だけで言えば、アニメ表現は袋小路に入ってしまっているのかなと思えた。3DCGとかいう技術にしても、それは何の為に施される技術なのか。リアルさの為か。ではリアルさとは何なのか。「アニメは作り手の思い入れだけで成り立っているヘンな映画」と押井氏は以前言ってたが、では思い入れの希薄なアニメは映画として成立しないのか。そうなのかもしれない。描き出すべき描線への意志が希薄なら、当然描き出されるモノも希薄になるだろう。このアニメを観ていても、紙芝居みたいな絵に英語を喋らせたりするよりも、いっそ生身の役者にこういう特異な役を宛がってみた方が面白いのではないかと思えた。(さすがにヒロインはそれなりに魅力的ではあったと思うが、他の脇役や敵役は時にアクションや表情が死んでしまっているように見えた。)

*)セーラー服と日本刀という取り合わせには、着流しにヤットウってカンジの風情もあるが、日本的な暗い情念が匂いすぎる発想でもあるように思う。また劇中でヒロインがセーラー服を着るのはなりゆきがそうなったからに過ぎず、そこに日本刀や吸血鬼というモチーフとの必然的なつながりが見出せないのも残念。画的な発想が物語に昇華されてないのではあるまいか。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)華崎[*]

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